「ゴールは偶然の産物ではない-FCバルセロナ流世界最強マネジメント」を読んだ

ゴールは偶然の産物ではない~FCバルセロナ流世界最強マネジメント~

ゴールは偶然の産物ではない~FCバルセロナ流世界最強マネジメント~

今でこそ世界的クラブとして認知されてる FC Barcelona ですが、著者であるフェラン・ソリアーノ氏が副会長になった 2002–2003 シーズン時点では、チームの成績も振るわず、収益面でも世界で 13 番目、当時世界一のマンチェスター・ユナイテッドとは 2 倍以上の差がある苦しい状況でした。

そんな苦しい状況の中で、MÉS QUE UN CLUB (クラブ以上の存在) という理念の実現に向けて、自分たちの強みや弱みを理解して、ロジカルに意思決定をし、迅速に行動していくことで、現在の地位を築いていった過程が具体例と共に書かれていて非常に学びのある本でした。

内容も、市場におけるポジショニング理解と戦略立案、リーダーシップ、人材の育成と採用と報酬の在り方、交渉、イノベーションといったサッカーに関する本というよりは、マネジメントに関するビジネス書といった印象です。

どの業種の企業経営者たちも、自分たちの業界は他とは違うと主張する。… (略) … だが、実際に世界を旅してみると、お国柄の違いこそあれ、戦争のやり方はだいたいどこも似通ったものであることに気づく。人間は誰しも、状況に応じて見え隠れする論理によって動かされるものなのだ。

著者のソリアーノ氏は MBA ホルダーですが、サッカーという不確実性が高く、普通の企業とは異なる慣習が多そうな業界でさえも、その根底にあるビジネスの作り方、組織の運営方法といった普遍的なベストプラクティスがベースとしてあり、それを元にクラブやリーグ独自の事情を踏まえて、戦略を決めて実行していくことで、本書のタイトルになっている偶然の産物でないゴールが生まれるのかなと。

イノベーションを生み出すか、誰かの真似をするか? 何という愚問!もちろん、イノベーションに決まってるじゃないか! とあなたは思ったに違いない。では、あなたが市場で 13 番目に位置する会社を任されていて、市場のリーダーがあなたの会社の 2 倍の収益を上げていたとしたら、どうするだろうか。責任感のある経営者なら当然、市場のリーダーが大成功を収めている理由や方法を理解しようとするだろう。ライバルからできるだけ多くのことを学び、自分の組織に利用しようとすることは、決して間違ってはいない。

アイデアのつくり方 も "アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない" と書いていますが、何事にも応用が効くような普遍的なベストプラクティスだったり、上手くいってるライバルの分析から、良きパターンを学んだ上で、それぞれの業界、国や地域、会社、組織に合わせてカスタマイズして実行に移していくのが何より大切なことなのではないでしょうか。

「Hit Refreshーマイクロソフト再興とテクノロジーの未来」を読んだ

Hit Refresh(ヒット リフレッシュ) マイクロソフト再興とテクノロジーの未来

Hit Refresh(ヒット リフレッシュ) マイクロソフト再興とテクノロジーの未来

Microsoft の CEO である サティア・ナデラ氏が、CEO になるまでの生い立ち、および、CEO として Microsoft という巨大企業を何を考えながら変革していったのか、そして、これから人々とテクノロジーはどこへ向かうのか、を自身の言葉で語っている本です。

実際にナデラ氏が CEO に就任してから Microsoft の業績もよくなっているようで、まだまだ道半ばではあるようですが、変革を進めながらもちゃんと成果を出しているのは改めてすごいなと思いました。

マイクロソフトをダメにした前CEOと復活させつつある現CEO

以下、抜粋コメント形式でいきます。

CEO の C は Culture の C

私は、CEO の C は「culture(文化)」の C だと考えたい。CEO は、企業文化の管理人だ。オーランドで社員に語ったように、耳を傾け、学び、個々の情熱や才能を会社のミッションに生かす文化があれば、その企業は何でもできる。そのような文化を生み出すのが、CEO としての私の最も重要な仕事だ。

皆が真剣に仕事に取り組んでいると、何かのタイミングで意見が割れたときに、それぞれがそれぞれの立場で主張を初めて前に進めなくなるってことはどこの会社でも起きがちだと思っていて、そういう時に立ち返る場所が企業文化なのかなと。そうした企業文化を社員一人一人が大切にしてる会社はやっぱり上手くいってると思っていて、Amazon の Customer Obsession なんかはその筆頭なのかなと思います。それは CEO としての最も重要な仕事 だとナデラ氏は言ってるわけですが、同意だなぁと。

私は先に、文化とは漠然としたあいまいな言葉かもしれないと述べた。だからこそ私たち幹部は、希望する文化を細心の注意を払って定義した。何から何まで調査するのもそのためだ。こと人間に関しては、データが完璧な指標になるとは言えないが、調査できないものは監視もできない。わが社では、定期的に社員の意識調査を行い、その意向を探っている。 文化の育成に3年間、集中的に力を注いだ結果、励みとなる変化が見られるようになった。アンケートによると社員は、会社が正しい方向に向かっている、長期的な成功へ向けて正しい選択をしていると感じていた。また、別の部署と一緒に仕事をする機会が増えたとの回答もあった。こうした意見はまさに、私たち幹部が望んでいたものだ。

そして、その文化というのは漠然としたあいまいなものだからこそ、希望する文化を細心の注意を払って定義して、それが浸透しているかを何から何まで調査すると。

変革は内部から生まれなければ定着しない

CEO発表2日前の事前会議の場で、私はジルと、この失望した優秀な人たちを奮起させる方法について熱心に語り合った。私はその時、彼らが非難をするばかりで自分の責任を投げ出していることに少々いら立っていた。するとジルは私を遮って言った。「あなたは気づいていない。彼らも本当はもっと仕事がしたいと思っている。でも、それができずにいるのよ」。つまり、最初の仕事は社員に希望を抱かせることだ。それが変革の第一歩となる。まずは内部から始めなければならない。

そんなナデラ氏も、CEO に就任する時点では、後ろ向きな社員が多いことにイライラする場面もあったみたいですが、そうした人に希望を抱かせることが変革の一歩であると同僚に気づかされたみたいですね。

「どんな大企業でも、変革は内部から生まれなければ定着しない。これは反論の余地のない事実だ」 ライバルをうらやむ気持ちを変革の動機にすれば簡単かもしれない。確かに、アップルの iPhoneiPad、グーグルの低価格アンドロイド携帯やタブレットは、わが社の羨望の的になっている。だが、ライバルをうらやむこうした気持ちは、後ろ向きであり、外部の刺激によりもたらされるものであって、内部から湧き出るものではない。そのため、それをもとに、真の再生の道をどこまでも突き進むことはできない。 イノベーションを加速するため、私たちはわが社の魂、わが社独自の核を再発見する必要がある。マイクロソフトだけが世界に貢献できる点、もう一度マイクロソフトが世界を変える方法を、誰もが理解し、実践しなければならない。私たちの目の前には、かつてないほど大胆で冒険的な仕事がある。マイクロソフトは、モバイルファースト、クラウドファーストの世界で生産性を追求するプラットフォーム企業になる。再び生産性を向上させ、世界中のあらゆる人、あらゆる組織に、これまで以上に多くのことを実行・達成する力を与える。

そうした変革はそれぞれの内部から湧き出るものでなければならなく、「この会社の存在理由は何か?この新たな役職での私の存在理由は何か?」 というのを、あらゆる組織のあらゆる人間が自らに問い、議論して、同じ認識を持って進めるようにすることが大事なのだと、ハッとさせられました。

リーダーシップとは?

リーダーシップとは、選択を行い、選択を実行するためにチームを結集させることだ。だが、インド政府の高官を務めた父も言っていたように、一丸となった組織をつくることほど難しい仕事はない。私はその点についてこう考える。チームを率いる際に、意見の一致を求めるべきか専横的に命令すべきかという選択は間違っている。どんな組織をつくるにしても、まずは、トップダウンでもボトムアップでも進歩や発展を推進していける明確なビジョンや文化を持つべきだ。

ビジョンと文化。このどちらが欠けると、いくらよい意思決定をしても、チームを結集させて実行していくのは難しいですね。しかし、裏を返せばそれができれば、きっとその組織は何をやっても上手くいくはずで、そうした組織を作っていくことに少しでも貢献したいと思ったのでした。