「プロフェッショナルマネージャー」を読んだ

プロフェッショナルマネジャー

プロフェッショナルマネジャー

「プロフェッショナルマネージャー」は、米国のコングロマリット ITT の CEO として 58 四半期連続増益を遂げた伝説の人物、ハロルド・ジェニーン氏の経営回想録。柳井正氏が経営の教科書としてしているらしく、巻末でも本書の解説をしています。

今年になってから、隔週で社内マネージャー研修というのを受けています。単に座学で何か学ぶというよりは現実に即した課題について考えてきた結果を元にマネージャー同士で議論するという形で進めていて、他の人の視点も聞けることで学びが多くよい会になっていて、なんとなく論文を輪読している感覚に近いです。

本書は、その研修の中で推薦図書になっている本ですが、読んだことがなかったので読んでみました。2004 年に発売されて、それ以前に執筆された本なので、 2018 年と違ってるところもあるけど、学びはたくさんある内容だったので、特に印象に残った部分をまとめます。

マネジメントの仕事とは?

本を読む時は、初めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとは逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。

まず目標を設定して、そこから逆算しないと成果をあげられない。努力をしても、その努力の方向性が間違っていたら全てが無駄になってしまう。当たり前だけど、忘れないようにしないといけない。

ノーサプライズ経営

では、そのできる限りのこととは何かというと、 自ら意思決定を行いそれが間違いなく遂行されるようにすることであり、その成功の唯一の道は、会社の福利に影響を及ぼすあらゆる状況に関する事実を完全に把握すること といったことが書いてあった。

予期しなかった問題を発見し、それに対処するのが早ければ早いほど、解決するのはそれだけ容易になる。全てを発見できなくても 95% くらいを早期に対処できれば、残りの時間とエネルギーを網の目を漏れた、二、三の大きな問題の処理に向けることができよう

とあり、それを「ノー・サプライズ経営」と呼んで実践しているのはなるほどなと思った。

その、「ノー・サプライズ経営」をするための必須条件として、"本当の事実" をそれ以外のものから嗅ぎ分けながら、時には泥臭く情報を集めて整理する必要があると指摘しています。

この泥臭くの部分が重要で、ビジネスは人生と同様に活力に溢れた流動的なものであり、常に理路整然と整理された報告書だけがあがってくる世界ではあり得ないわけで、そのような一次情報から逃げずに、何が事実か?何が分かっていないか?を明らかにするために最大限の努力をすることが必要ですね。

さらに、この情報収集のためのシステムは ITT 社でも必ずしも最初から上手く行ったわけではなく、最初はあいまいで要領を得ない報告書に頭を悩まされ続けるところから、報告内容に何を期待するかをハッキリ述べたメモを配布して、地道にそのシステムを作り上げていったとのことで、自分自身のこの辺りの努力はまだまだ足りないと感じます。

自分が遭遇してる物事を深く見極めなくてはならない。それによって、周囲の人々がそれぞれの持ち場で有効に能力を発揮することを助け、各自の働きの単なる合計より大きな総合的成果を上げさせる。それがリーダーシップだ。

また、自分が遭遇してる物事の本質を深く見極めることで、周囲の人がそれぞれの持ち場で有効に能力を発揮しやすくなり、それらを統合したときにより成果をあげられるようにする、これがリーダーシップであると。納得。

マネジメントの良否

そのマネジメントの良否は、それが自ら設定した目標を達成するかどうかによって判定され、その目標が高ければ高いほど、良いマネジメントだと言える。

目標を設定して、それを達成するための情報収集と意思決定を繰り返して目標を達成することは基本だけど、その目標設定は高ければ高い方がよい。一方であまり現実感のない目標を設定しても意味がないので、 やはり OKR (Objective & Key Results) のガイドラインとしてよく言われている「達成が難しいかもしれない少し高めの目標」をおくのが大切なのでしょう。

やるべきこと、やるべきでないことを決め、やるべきことをやりきる

マネージャーの正規の執務時間は、おおむね他人のためのものだ。組織の中のだれかが彼と連絡をとる必要がある時には、いつでもそれに応じられなくてはならない。

若干ブラックっぽく聞こえるのだけど、まぁ、そういう部分はあるよなという印象。

真のリーダーで、どれほど高価につこうとも自分に課された宿題をやらない人間には、私は会ったことがない。本当に、ほかに道はないのだ。

みたいなことも書いてあった。それはその通りなのだけど、だからといって、なんでもかんでもがむしゃらにやってると疲弊していく一方なので、ちゃんとやるべきこと、やるべきでないことを定義して、やるべきになったことをやりきらないといけないですね。

さいごに

自分自身を、成功するに違いないマネージャーに仕立て上げるために、人生の多くの快適な面を放棄する決意と高邁な職業意識が自分にはあるだろうか?

正直なところ、全体的に意識高杉と思う部分も多いわけで、本書の話を参考にしつつやるべきことはちゃんとやるけど、もうちょっとゆるふわに仕事をしたいと思った。おわり。