「ALLIANCE : 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」を読んだ

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

リンクトイン創業者のリード・ホフマンが、個人と企業の関係性の新しい在り方について記した本。

「新しい雇用」といった主語が大きいタイトルはついてるものの、組織のミッションと個人の目標の整合性をうまく取りながら、個人にとっても企業にとってもメリットのある状態を作っていきたい経営者、人事担当者、マネージャーにとって有用な内容なのではないかと思いました。

雇用を「アライアンス」だと考える

本書の目的は、雇用を「取引」ではなく「関係」としてとらえるための枠組みを示すことにある。雇用を「アライアンス」だと考えてみよう。自立したプレーヤー同士が互いにメリットを得ようと、期間を明確に定めて結ぶ提携関係である。マネジャーと社員がお互いを信頼して相手に時間と労力を投入し、結果的に強いビジネスと優れたキャリアを手に入れる。「アライアンス」は、そのために必要な枠組みとなるのだ。

終身雇用を必ずしも保証できなくなっている企業、そういう時代背景から自分磨きに余念がなく自らをフリーエージェントだと捉えて良い機会があればいつでも転職する個人、お互いを信頼して背中を預け合うのが難しい時代背景の中で、企業と個人の双方が協力して互いにメリットを享受できる関係をつくる枠組みを「アライアンス」として紹介しています。

「アライアンス」は、個人と企業が「どのような価値を相手にもたらすか」に基づいてつくられるものなので、お互いが提供できるもの、手に入れたいものを提案し合い、合意していく必要があると書かれています。

考えてみると、そんなに新しい概念というわけでもなく、自分がこれまでの人生で 2 回の転職をする中でも、自分ができること、自分がやりたいこと、相手が期待してること、を摺り合わせた上で合意の上で転職をしていたりするので、自分の身の回りにおいては普通にやっていることのような気がしますね。

「アライアンス」を構築する方法

そのようなアライアンスをどのように構築していくのか?その真髄は、個人と企業が期限付きの「コミットメント」を設定した上で、双方が約束を守ることを繰り返すことで少しづつ関係を深めていくことにあるそうです。 その「コミットメント」は、

  • コミットメント期間の目標は?
  • そのコミットメント期間が成功した場合に、会社に何をもたらすのか?
  • そのコミットメント期間が成功した場合に、社員に何をもたらすのか?

といった形で言語化された上で、定期的に進捗を確認したりフィードバックをしあいながら、期間の終了が近づいたときには新たなコミットメントを設計していきます。これを繰り返すことで、双方が得たいメリットを享受しながら、信頼を構築していくことができます。

コミットメント期間は、あらかじめ期間が決まっている。これがピリリとした緊張感をもたらし、また、将来の関係を話し合うための納得できる時間軸ともなる。優秀な社員が、最初に決めたコミットメント期間を最後まで全うしようと思える、確たるよりどころにもなる。そして最も重要な点として、現実に根ざしたコミットメントであれば、双方とも誠実でいられる。これが信頼構築に不可欠なのだ。

働き方を「いくつものコミットメント期間の積み重ね」という形に位置づけ直して、定期的に将来の関係を話し合うことで、成長意欲のある優秀な人材を惹きつけ、自社で働き続けようと思って貰いやすくなるメリットがあると書いてありますが、これは個人と企業の関係に限らず、ビジネスにおいて最も基本といえる、約束したことを守ることを忠実にやっているように感じます。

このように、企業は個人と適切なコミットメント期間を定期的に設定していく必要がありますが、それをする上で、下記の言葉は心に留めておきたいなと思いました。

目指すべきは、会社と個人の目標をあらゆる面で完璧に一致させることではない。ある期間、一定の条件の下でのみ、自然な形で両者を揃える「整合性」を目指そう。

人それぞれ色々な価値観や目標を持って生きているわけで、画一的なことを言われて納得する人がいるわけもなく、このあたりはその人ごとに話をしながら考えていく必要があるわけで、だからマネージャーってのは、やり甲斐があるけど大変な仕事なんだよというのを、若かった頃の自分に教えてあげたいですね。

まとめ

組織として成果をあげていくための目標設定の枠組みとして OKR (Objectives & Key Results) というものがありますが、組織としてどうやって成果を出していくかにフォーカスがあたっている印象があります。 「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」を読んだところ、OKR で組織として達成することと個人のキャリア成長をどうやって結びつけていくかについては片手落ちな感がありましたが、本書と合わせて読むことで足りない部分をお互いに補完して、企業にとっても個人にとってもよりよい関係を築く手助けになるのではないかと思いました。